STYLE 女を変える「下着」

下着を作り、売る、現場の2人に語ってもらった 女性と下着の新たな関係とは−−。
「WACOAL DIA」ディレクター・小川直子さん
 「服装に男女差がほとんどない今、女性が“女性”を満喫できるアイテムって、下着くらいしかないと思うんですよね」…。 DIAの下着は、繊細で美しいオリジナルのレースを使い、手作業で丁寧に仕上げられる。まるで洗練されたドレスのような印象で、これまでの国産の下着にはなかった高級感が売りだ。…[ショップでの]1人当たり1回の購入は平均5万円弱。ちなみに、百貨店の下着売り場は約7500円。再来店率も高く、半年で2回以上が約2割。最高7回という女性もいる。20代から60代までと年齢層も幅広い。…「透けないとか、目立たないという、従来、下着に求めていたのとは違う価値観を持つ女性が増えています。外から見てどうかでなく、自分が着けて美しいと感じるかどうかが重要なのです」…。小川さんは、接客をしていると、気づくことがあるという。1度目に訪れたときより、2度目の方が体が締まっている人が多い。「下着を通して、内からの美意識に目覚めたというのでしょうか。“やせなければ”というような強迫観念ではなく、下着の美しさと調和する緊張感ある体を自ら作り上げたいと感じているようです」と小川さん。

下着専門店「Rue de Ryu(リュー ドゥ リュー)」オーナー・龍多美子さん
  龍さんいわく、これまでの国産の下着は「工業製品」。素材は変わっても機能優先。透けない、服にひびかない、胸を寄せて上げて、おなかは引っ込め、ヒップアップ……と、作る側も選ぶ女性の側も、外からどう見られるかに意識が集中していた。「各メーカー横並びでデザインも画一的」だ。… 片やヨーロッパの下着はどうか。「各メーカーは、下着でどんな女性を演出するのかを競う。それぞれの女性像にいかに共感してもらえるかが勝負で、機能を強調するなんてあり得ません」と龍さん。パリコレクションで、プレタポルテ(高級既製服)のブランドが発表する服と同じように、下着もそれが醸し出す雰囲気が重要視されるという。… 龍さんは、今年7月にオリジナルの下着を作り始めた。機能に着目するのではなく、「下着が生み出す情緒」を楽しんでほしいという思いからだ。その最も象徴的な商品がブラジャー。実は、カップサイズというものがない。…龍さんのブラジャーにはアンダーバストのサイズしかない。乳房をカップで覆うのではなく、乳房の丸みを下から支えてぐっと持ち上げる仕組みになっているからだ。「女性の胸元は美しいものですが、それは乳房の大きさだけで測れるものではありません。人と向き合って話しているとき、目がいくのは、首から胸にかけてのデコルテ部分。この空間を美しく演出したかったのです」…。